加古川・姫路の山本社会保険労務士事務所ブログ

雇止め・解雇・退職について<1/2回>-加古川・姫路の社会保険労務士事務所- (金, 07 11月 2025)
11月に入りました。11月は異称で「霜月」ですが、霜が降りる月、霜降月が語源というのが有力だそうです。他にも <神が帰ってくる月>で「神帰月(かみきづき)」という異称もあるそうです。 今回、次回と退職や解雇について、特に「有期労働契約についての雇止め」と「退職勧奨」について記載してまいります。 有期労働契約の雇止めについて 有期労働契約とは、期間を定めて締結された労働契約のことをいいます。例えば、6か月契約、1年契約などです。 一定期間の決まった建設工事など、はっきりした期間の有期契約などを除き、契約期間中の退職や、更新など労使間でトラブルになる可能性があります。そのため有期労働契約の「締結」「更新」「雇止め」に関する基準を押さえておくことが大切です。 ■締結 有期労働契約を締結する場合の1回の契約期間の長さは、原則3年が上限です。(労働基準法第14条)  また、更新上限の有無(更新回数の上限または通算契約期間)が労働条件の明示事項として必要になっています。 さらに労働基準法で規定している雇い入れ時の労働条件の明示事項に加えて、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4つの事項を文書などにより交付する必要があります。更新時も同様です。 厚生労働省 パンフレット「パートタイム・有期雇用労働法のあらまし」より抜粋・転載 (https://www.mhlw.go.jp/content/001567635.pdf) ■更新 契約の更新をする場合は締結時と同様に労働条件の明示が必要です。また更新回数や通算契約期間の上限を新たに設ける場合は、新たに設ける、または短縮する理由を更新前に説明しなければなりません。また、有期労働契約を反復更新する場合として、同一の使用者との間で、更新等により通算契約期間が5年を超えた場合は、労働者の申し込みにより、無期労働契約へ転換できます。(労働契約法第18条) 厚生労働省 パンフレット「パートタイム・有期雇用労働法のあらまし」より抜粋・転載 (https://www.mhlw.go.jp/content/001567635.pdf) ■雇止め 有期労働契約については、やむを得ない事由がなければ、契約期間が満了するまで、労働契約を解除することができません。これは使用者も原則労働者もです。(労働契約法第17条) また、有期労働契約は契約期間の満了によって終了するものですが、一定の場合には雇止めを認めず、契約が更新されたものとみなすことがあります。(労働契約法19条) 内容としては ① 有期労働契約が反復更新されたことで無期契約と実質的に変わらない状態と判断される場合 東芝柳町工場事件(昭和49年最高裁第一小法廷判決) ② 有期労働契約の期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合 日立メディコ事件 (昭和61年12月4日最高裁第一小法廷判決) には、解雇に関する法理を類推すべきとなります。(労働契約法第16条) そうなると、更新しないことが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、雇止めは権利濫用として無効となり、その相当性の証明も事業所が立証することとなりますので注意が必要です。 今回は有期労働契約についてのトラブルになる可能性を踏まえて、「締結」「更新」「雇止め」に関するポイントを確認しました。 実情により判断すべきことですので、実際にご不明な点があればお気軽にご相談ください。 1005

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被扶養者収入要件 19歳以上23歳未満は150万円へ拡大(健康保険)-加古川・姫路の社会保険労務士事務所- (Tue, 14 Oct 2025)
健康保険では、一定の家族は「被扶養者」として、病気やケガ、出産の際に保険給付を受けられることになっています。 この被扶養者として扶養認定を受けるためには、定められた要件を満たす必要があり、その一つが、扶養になる家族の年間収入です。特定の条件を除いて現在は「年間収入130万円未満」となっています(一般にいう130万円の壁)。今回、扶養認定日が2025年10月1日以降で、扶養認定を受ける方が19歳以上23歳未満の場合(被保険者の配偶者を除く)は「年間収入150万円未満」に変わります。 年齢要件(19歳以上23歳未満)は、扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します。例えば、扶養認定を受ける方が2025年11月に19歳の誕生日を迎える場合には、2025年(1月1日~12月31日の暦年)における年間収入要件は150万円未満となります。  なお、届出は2025年10月1日以降であるものの、2025年10月1日より前の期間について認定を受ける場合には、19歳以上23歳未満の被扶養者にかかる年間収入の要件は130万円未満で判定されることになっています。 日本年金機構ホームページより抜粋・転載 (https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2025/202508/0819.html 加古川・姫路の社会保険労務士は山本社会保険労務士事務 1005
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地域別最低賃金の改定-加古川・姫路の社会保険労務士事務所- (Tue, 14 Oct 2025)
年は全国各地で大幅な最低賃金の引き上げが話題になっています。記載時点の9月では全都道府県の令和7年度地域別最低賃金の改定額の答申が出そろったところです。答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、令和7年10月1日から令和8年3月31日までの間に順次発効される予定です。 厚生労働省ホームページより抜粋・転載 (https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63030.html) 兵庫県では64円アップの1,116円で2025年10月4日改定予定 岡山県では65円アップの1,047円で2025年12月1日改定予定 となっており、発行予定日が都道府県により差があります。 給与等への反映に注意が必要です。 厚生労働省「令和7年度 地域別最低賃金 答申状況」抜粋・転載 (https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001557056.pdf 加古川・姫路の社会保険労務士は山本社会保険労務士事務 1005
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退職金制度について<1/2回>-加古川・姫路の社会保険労務士事務所- (Mon, 08 Sep 2025)
夏の賞与の支給を終えられたところが多いかと思います。賞与は従業員のモチベーションアップに貢献しますが、今回はモチベーションアップの制度のひとつである「退職金制度」について取り上げます。勤続年数によって退職時に支給される一時金、というイメージが一般的な退職金ですが、その制度の種類や導入効果などを確認していきます。 退職金とは 従業員が退職をする際に会社から支給される一時金や年金を退職金や退職給付といいます。諸説ありますが、起源は江戸時代の「のれん分け」と言われているそうです。長年の奉公を終えた際に独立の業を営む権利の「のれん」を渡したり「ご苦労様」と慰労の意味や独立の資金として「金一封」を渡していたそうです。  現在では退職金制度を導入している企業の割合として、従業員数30~99人までの会社で70.1%、従業員数100~299人までの会社で84.7%の割合という回答結果が令和5年の厚生労働省の調査で出ています。 厚生労働省 「令和5年就労条件総合調査概況」より抜粋・転載 (https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/dl/gaiyou03.pdf) 退職金制度の目的 退職金には ① 長年の功績に対する報奨 ② 賃金の後払い ③ 生活保障 という意味合いがあります。 退職金を支給するのは義務ではありません。そのため、退職金制度がないことで問われる法律上の問題はありませんが、制度を導入することには企業にとってメリットがあります。 ■メリット:  優秀な人材の確保  勤続意欲向上  不正行為の抑止力 など、求人票へ記載することで求職者へのアピールになり、長期勤続への期待などの効果が挙げられます。 また、制度によって税制優遇があります。詳しくは税理士先生にご確認ください。 一方で課題としては ■デメリット:  導入にお金や労力がかかる  制度の維持  不況時の資金繰り などが挙げられます。また、一度制度を導入すると簡単に廃止することはできないため、導入には慎重な検討が必要です。 退職金制度の種類と特徴 退職金には一時金と年金があります。また退職金の確保は社内で準備するか、社外で準備するかという点もあります。それらを含めて今回は4種類を制度導入の検討対象として挙げてみます。 ① 自社積み立て ② 企業型DC(確定拠出年金) ③ 生命保険 ④ 中小企業退職者共済制度(中退共) 第13回社会保障審議会企業年金・個人年金部会 「企業年金・個人年金制度の現状等について」より抜粋・転載  (https://www.mhlw.go.jp/content/10600000/000660680.pdf) 次回の事務所通信へ続く→ 加古川・姫路の社会保険労務士は山本社会保険労務士事務 1005
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社会保険の加入対象の拡大-加古川・姫路の社会保険労務士事務所- (Fri, 11 Jul 2025)
社会保険の加入対象の拡大① 現在、社会保険の適用事業所に勤務する従業員で正社員や役員だけでなく、アルバイト、パートタイマーであっても、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上である人は、被保険者になります。 また、週所定労働時間等が正社員の4分の3未満であっても、51人以上の適用事業所に勤務し、以下の要件を満たす人は、短時間労働者として被保険者になります。  ①週の所定労働時間が20時間以上あること  ②所定内賃金が月額8.8万円以上であること  ③学生でないこと 今回の年金制度改正法案では、このうち②所定内賃金が月額8.8万円以上であることを3年以内に撤廃し、 51人以上の適用事業所という企業規模要件を10年かけて段階的に対象を拡大していきます。 最終的には、すべての適用事業所が短時間労働者として社会保険に加入する内容になっています。 社会保険の加入対象の拡大② 現在、社会保険の強制加入対象事業所として、法人や個人事業で常時5人以上の法律で定める業種に該当するところが対象です。 今回の改正では、個人事業で常時5人以上の法律で定める業種に該当しなかった事業所(農業、林業、漁業、飲食サービスなど)が強制加入の事業所として拡大されます。いままでは非該当の業種は常時5人以上でも任意でしたが、この改正により個人事業でも常時5人以上の事業所は業種に関わらず社会保険の強制適用事業所になります。2029年10月からですが、2029年10月時点で既に存在している事業所は任意のままとなります。 1005

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